なぜ『ブラッシュアップライフ』はこんなに「感じが良い」のか?|感想・レビュー

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ブラッシュアップライフレビュー

『ブラッシュアップライフ』とは、2023年1月8日より日本テレビ系「日曜ドラマ」枠で放送されているテレビドラマです。

私がこのドラマを見ていて驚くのは、その並外れた「感じの良さ」です。

この記事では私が考察したことをブログにまとめました。

目次
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ブラッシアップライフはなぜこんなに感じが良いのか

この「感じの良さ」は偶然発生してしまったものではなく、用意周到に作られ視聴者へ提供されたものだと考えています。

どのように「感じの良さ」を積み上げていったのか?

その要素を解析していきます。

宗教色がないから

2022年7月に安倍晋三元首相が暗殺されたのがきっかけとなり、宗教に対する警戒感や嫌悪感が国民の間に膨らんできています。

そんな中「何度も生きなおして徳を積み、より良い来世を獲得する」という、まるで宗教のお題目のようなこのドラマのテーマを聞いた時は「今それをやるのはタイミングが悪すぎるのでは?」と思ってしまいました。

しかし、最初の数話を見ただけで「極めて宗教的になりそうなテーマなのに全く宗教色を感じさせない」というアクロバットのようなことを実現するバカリズムさんの見事な脚本に舌を巻きました。

来世が「オオアリクイ」や「ニジョウサバ」というオフビートな設定のため、宗教的なしかつめらしさとは程遠いユーモラスな人生のやり直しとなっています。

物語全体に「神」の存在を全く意識させることがない点もナイスです。

バカリズム氏本人が演じる死後の案内人は市役所の職員のようで、全く「神」を感じさせない描写となっています。

このドラマに対する絶賛は色々なSNSなどで目にしますが「宗教色の排除」という、大切で難しい課題を見事クリアしている点に言及している人はほとんどいません。

私の想像ですが、脚本家のバカリズムさんや制作陣が最も心を砕いたのはこの点でしょう。

大震災等のヘビーな時事ネタを一切描かないから

ドラマ『ブラッシュアップライフ』は時代考証の細かさや正確さが評判です。

90年代から現在までの出来事や社会風俗がふんだんに盛り込まれています。

普通のドラマ作りをするならば、1995年の阪神淡路大震災や2008年のリーマンンショック、2011年の東日本大震災や2020年からのコロナ禍など、どうしても避けがたく描くこととなります。

しかし、バカリズムさんの脚本はその辺りの「思い出すのがつらくなるようなヘビーな事象」は完全に排除しています。

この割り切りがドラマ全体を覆う「感じの良さ」に結実しています。

主人公「近藤麻美(あーちん)」の徳がそもそも高いから

安藤サクラさん演じる主人公「近藤麻美(あーちん)」は人間として来世に生まれたいと考えて、二周目からは徳を積む人生を送ります。

しかし、冷静に考えてみると、主人公の「あーちん」は度を越した人の良さを持った人物で、意識的に徳を積もうとするよりも先に、そもそも徳が非常に高いです。

二周めの人生を生きる人は確実に上がることを知っている株を買うなどの「利己的」な行動を必ず取るはずですが、「あーちん」徹頭徹尾「利他的」な行動を取ります。

例えば、悪意の塊としか形容できないほどに行ないのひどい先生「ミタコング」を何度も何度も救いますが、「徳を積むため」というよりは「内なる良心に突き動かされて」の行動のように見えます。

また、初めて「やり直し」をしている自分以外の人「まりりん」の事を知った時も、そのことに喜んだり安堵したりするよりも先に「まりりんは想像を絶するようなつらい体験をしてきたんだと思う」と考えるような、思いやりに溢れたパーソナリティーを「あーちん」は持っています。

こんなに他人思いの「あーちん」ですが、対外的には常ににこやかで、物腰も柔らかく、そして飛び切りユーモラスです。

ドラマを見ている視聴者は全員、主人公の「あーちん」が大好きになってしまいます。

二人目の生き直し人「宇野真里(まりりん)」の徳がさらに高いから

ドラマに登場する二人目のタイムリーパー、水川あさみさん演じる「まりりん」の感じの良さも特筆すべきポイントです。

「まりりん」は2回目以降の人生全てを、親友「みーぽん」と「なっち」を救うことに捧げます。

そのために、あんなに大好きだった幼なじみと友達になることも叶わず、何度も何度もパイロットとなって二人が乗る飛行機を墜落させないことだけを目指します。

第8話でこの真実が明かされた時、私は号泣してしまいました。

今もこのエピソードのことを書きながら涙目になっているほどです。

「まりりん」の気高さに対して、視聴者としては「好感」を遥かに超えた「敬愛」の気持ちを持ってしまいます。

そして、その気高さを即座に理解し心を寄せる、主人公「あーちん」の人間性にも感動を禁じえません。

この二人の存在が、このドラマ最大の「感じの良さ」を生み出しています。

救済の対象である「夏希(なっち)」と「美穂(みーぽん)」があまりにのん気で愛らしいから

「まりりん」が数回の人生を全て投げ打って助けようとしているかつての親友「なっち」と「みーぽん」が何も知らずにあまりにものん気で愛らしいです。

突然の航空事故で死亡する二人ですので、もっと暗かったり重かったりするバックグランドや描写があっても普通なのですが、このドラマにおいては彼女たちは常に「小動物」のようにのん気で可愛らしいです。

二人を救う努力のためにかえって近寄りがたくなってしまった「あーちん」と「まりりん」に対して、常に気づかいをする「なっち」と「みーぽん」の性格の良さも見逃せないポイントです。

それによりさらに距離が生まれてしまうところも切ないです。

「なっち」と「みーぽん」の人物造形により、このドラマの「感じの良さ」はますます高まっています。

バカリズムさんの脚本の端々に優しさが満ちているから

バカリズムさんの脚本の特長は、細かいところにまで優しさが満ちているところです。

例えば、路上で偶然再会した「ふくちゃん」がミュージシャンをあきらめると吐露する場面で、「あーちん」と「まりりん」は「やめるのも勇気がいるもん。ふくちゃん偉いよ」と言います。

「ふくちゃん」の立場として、これ以上は考えられないほどに満点な優しい言葉です。

また、妹「遥」が結婚する相手がお父さんみたいな人だったのに、「ほぼ斎藤工みたいな人」と言い張る妹に対し、心の中で「ナイス!ほぼ斎藤工!」と呼びかける「あーちん」。

モノローグさえ優しいです。

周りの人たちを救うために「あーちん」が脈絡もなく古い友人・知人に連絡をしても、誰も警戒心を持たない所もファンタジックなほどに優しい描写です。

普通、このような「よく分からない知人から突然の連絡」があったら「宗教の勧誘?」「ネットワークビジネス?」など、とにかくガードを高くして警戒します。

しかし、そのような世界観ではないという設定が「優しさ」を強く感じさせます。(現実には全くお勧めできない行動パターンですが…)

映像が上品で美しいから

このドラマでは白を基調とした絵作りをしていて、その上品さと美しさも感じの良さにつながっています。

まずはタイトルバックの美しさについて力説したいです。

特に第9話、小学校の入学式で再会する「あーちん」と「まりりん」が春の光に包まれながら「5」と「6」を指でジェスチャーを交わすスローモーションでタイトルバック。

ストーリーのエモさも相まって、日本のドラマ史に残るほどに美しいタイトルバックでした。

また、死後案内所は「白を基調とした」どころか、全面「白」で大変美しく、清潔感があります。

この絵作りの上品さ、美しさから、主人公のいかなる人生のステージに対しても「この人生嫌だな」と感じませんし、死後の世界さえ好感を持ってしまうほどです。(それが良いことかどうかは別として)

この徹底した美しさには理由があって、それは「物語の構造上、撮影コストが大幅に圧縮できたから」ではないかと考えています。

ドラマ『ブラッシュアップライフ』はタイムリープものなので、同じ場面を何度も何度も使いまわしています。

しかし、シチュエーションやナレーションが毎回異なっているために、繰り返し同じ場面を見せられても全然退屈しません。

同じシーンを何度も使用できることにより、それぞれのシーンをより丁寧に美しく演出することが可能となったのだと考えます。

物語の性質を100%利用した美しい画面作り。

感じが良いです。

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まとめ・感想

『ブラッシュアップライフ』はナレーション部分の毒舌や登場人物たちのおかしな行動などのために「ちょっとブラックなコメディ」という印象を最初は受けますが、しばらく見ていると物語の芯は「優しさ」であることに気づきます。

執筆時現在(2023年3月10日)、最終回はまだ放送されていませんが、このドラマ『ブラッシュアップライフ』が日本のドラマ史に残る「感じの良さ」であることは疑問の余地がありません。

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この記事を書いた人

ガジェットとオトクなライフハックが好きな主婦です。

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