ブルーノート東京でソロ・アコースティックライブが2023年6月5日に決定した、アイスランド出身のシンガー・ソングライター”Laufey”(レイヴェイ)。
Laufeyは、クラシックやスタンダードジャズからインスピレーションを得て、オリジナルの音楽スタイルを確立した才能あふれるアーティストです。
来日ライブのチケットは数分で完売。人気の高さがうかがえますね。
Laufeyの経歴と代表曲や音楽スタイルについてどこよりも詳しく深掘りします!
>>Laufey主催のオンライン読書会「The Laufey Book Club」に関する記事はこちら
Laufey(レイヴェイ) プロフィール
Laufey(レイヴェイ)は、アイスランドと中国、両方のルーツを持つシンガー・ソングライター。
代表曲は美声とメロディ、コードが見事に調和した「Fragile」だといえるでしょう。
Laufeyは1999年4月23日生まれの24歳で、レイキャビックとワシントンD.C.で育ちました。
現在はLAで音楽活動を行っています。
彼女は幼少期からクラシック音楽に親しみ、母親のLin Wei Sigurgeirssonや祖父の林耀基(Lin Yaoji)はともにバイオリン奏者です。
15歳のときにアイスランド交響楽団と共演し、その後2021年にバークレー音楽院を卒業。
2020年にデビューシングル「Street by Street」をリリースして以来、アイスランドやイギリスなどで注目されるようになりました。
2021年にはデビューEP「Typical of Me」をリリース。
Billie EilishやWillow Smithなどの同世代アーティストからも称賛を受けました。
2022年にはデビューアルバム「Everything I Know About Love」をリリース。
コロナ禍がやっと終息した2023年、初のワールドツアーを敢行し、6月には待望の初来日を果たす予定です。
Laufeyの読み方は?
アーティストとしての「Laufey」の読み方は「レイヴェイ」です。
本人がTwitterで名前の発音を紹介しています。
LAを拠点として全世界で活動することを前提として、より一般的な英語読みを採用したのだと思います。
this is how you pronounce Laufey 💛 pic.twitter.com/eB8iFdZ4U9
— laufey (@laufey) August 15, 2022
アイスランドでは本来「Laufey」は「ロイヴェイ」と発音します。
双子の妹Junia Linがインスタライブで「ロイヴェイ」と発音していましたので、家族の間では「ロイヴェイ」と呼んでいるのだと思います。
Laufeyの音楽スタイル
Laufeyは自身の音楽を「ジャズ」と呼んでいます。
音楽配信サービスやCDストア等でも「ジャズの新星」と評されることが多いです。
しかし、2022年にアメリカのレコードストア「amoeba」の企画に登場して紹介した「お気に入りのレコード」を見ると、ジャズ以外にもクラッシック、ポップスなどに強く影響を受けたことが分かります。
BBCのラジオ番組『Happy Harmonies with Laufey』のプレイリストからも彼女のカラフルな音楽志向が垣間見えます。
また、後述の「From The Start」や「Falling Behind」などを聴くと、アントニオ・カルロス・ジョビンを始めとするボサノバも彼女の中で重要な要素として存在していることは間違いありません。
Laufeyの音楽で最も特徴的なのは「声」です。
チャーミングなビジュアルからは想像できないようなしっかりした低音と、そこから軽やかに飛び跳ねるファルセットボイスはリスナーに忘れられない印象を残します。
Laufeyの曲レビュー
これまでに発表されたLaufeyの曲を深掘りしていきます。
From The Start
2023年5月11日に発表された新曲です。
オーケストラとの共演などの大舞台を経ても変に歌い上げる方向へは向かわず、限りなく軽やかな歌唱がとても良いです。
まさに「ベッドルーム・ポップ」と呼ぶのに相応しい、寛いだ雰囲気の素敵な歌です。
楽曲的には「Falling Behind」からさらにブラジル色を強めた「ボサノバ」となっています。
発表したその瞬間から既に「スタンダード」としか言いようのない「本物感」のあるソングライティングが素晴らしいです。
メロディーメーカーとしてのLaufeyのポテンシャルの高さを見せつけた、現在のところ最高傑作と個人的には思っています。
Fragile
Twitterなどを通して、多くの日本のリスナーに知られるきっかけとなった一曲です。
Laufeyの歌声の美しさ、メロディの強さ、コード展開の心地よさ、抑えの効いたオーケストレーションの見事さ。
全ての要素が過不足なくパーフェクトに組み合わさり、「Laufeyの代表曲」と誰もが認める大傑作となっています
2023年3月にはアイスランド交響楽団との共演ライブバージョンが公開されました。
元々のスタジオバージョンも奇跡のような美しさでしたが、オーケストラをバックにギターを弾き語りするLaufeyの音楽は筆舌に尽くしがたいほどの高みに達しています。
この夜の演奏には間違いなく「音楽の神」が宿っています。
I Wish You Love
フランソワ・トリュフォーの映画「夜霧の恋人たち」の主題歌で、原曲のタイトルは「Que reste-t-il de nos amours」です。
後半から入るパーカッションが音響的に心地良いアレンジです。
この曲も2023年3月のアイスランド交響楽団との共演ライブバージョンが印象的です。
ピチカートから始まる弾き語りというのもなかなか珍しいと思います。
Falling Behind
ボサノバスタイルのオリジナル曲です。
ボサノバとしてさらっと聴き流してしまいそうになりますが、実はポップスとしてのメロディの強さに要注目です。
ティンパニから始まるシンフォニック・オーケストラ・バージョンも必聴でしょう。
オーケストラをバックに従えて歌われるこの素晴らしいメロディは、まるでバート・バカラックのようです。
Street by Street
デビューEPのリード曲です。
まだ「Laufeyならではの魅力」が完全には出ていない印象を個人的には持ちました。
Valentine
Tik-Tokで特にバズった一曲です。
スタンダード・ジャズの味わいがあります。
Like The Movies
ファーストEP『Typical of Me』に収録されたオリジナル曲。
この曲が一躍脚光を浴びたのは2022年2月。
BTSのVがインスタストーリーで紹介したことが話題となりました。
omg!! thank you so much V ❤️ my song Like The Movies on V’s insta story 🥲 @bts_bighit @BTS_twt pic.twitter.com/iwh3Fo2rG5
— laufey (@laufey) February 4, 2022
BTSのメンバーはカルチャー感度が非常に高く、キュレーターとしても注目されているためLaufeyの知名度もこのタイミングで爆上がりしました。
私はこの時既にLaufeyのファンでしたので、この事件をLaufeyさんが大変喜んでいるのをTwitter上で微笑ましく見ていました。
Laufeyデビュー前の活動
テレビ出演
Laufeyは15歳の時に「ブリテンズ・ゴット・タレント」のアイスランド版「Ísland Got Talent 2014」に出場し、ファイナリストとなっています。
曲はニーナ・シモン版が有名な名曲『Feeling Good』です。
15歳とは思えない堂々とした歌いっぷりに驚きます。
豊かな低域が特徴的な歌唱もこの時点でほぼ完成しています。
翌2015年には「The Voice Iceland」に出場し、キャロル・キングの名曲『Will You Love Me Tomorrow』をデュエットで披露しました。
原曲はキャロル・キングの名盤『Tapestry』に収録されています。
客席にはLaufeyの母親Lin Wei Sigurgeirsson、双子の妹Junia Linの姿も見えます。
この二人については後述します。
クラシックの演奏家として
2016年にソリストとしてアイスランド交響楽団と演奏するLaufeyの映像が公開されています。
母や祖父のように、堂々とした演奏家としての一面が垣間見えます。
コロナ禍の期間中はSNSを中心に活動
2020年頃からTik-TokやYouTubeなどでオリジナル楽曲を発表します。
laufey (@laufey) オフィシャル| TikTok
活動開始がちょうどコロナ禍の時期と重なってしまったためどうしても活動の中心が「自宅で演奏した動画」になり、「ベッドルーム・ミュージシャン」という印象をリスナーに強く植え付けました。
音楽の手触りも「ベッドルーム・ポップ」と呼ぶのに相応しい密室感があったので、後にオーケストラを従えての大掛かりなコンサートを目にした時は驚きました。
しかし、元々はクラッシックの英才教育を受けた超エリートで、10代の時既にアイスランド交響楽団と共演した経験もあるくらいなので、本来はそういう晴れ舞台が似合うアーティストなのでしょう。
Laufeyの家族
双子の妹、Junia Lin Jonsdottir
Laufeyには双子の妹Junia(Junia Lin Jonsdottir)がいます。
Laufey & Junia celebrating their birthday in London! pic.twitter.com/HL0rw0uVBb
— Laufey Updates (@LaufeyUpdates) April 23, 2023
さすが双子だけあって見分けがつかないほどそっくりですね。
双子の仲は良好のようで、JuniaのインスタにはちょくちょくLaufeyが登場します。
Juniaも祖父・母・姉と同様、バイオリニストとして幼いころから英才教育を受けてきました。
10代の頃の演奏シーンがYouTubeにアップされています。
祖父は中国の有名バイオリニスト林耀基
Laufeyの母系の祖父は中国のバイオリニスト、林耀基(Lin Yao Ji)です。
残念ながら2009年3月16日に逝去されています。
母はアイスランド交響楽団のバイオリニストLin Wei Sigurgeirsson
Laufeyの母親はアイスランド交響楽団のバイオリニストLin Wei Sigurgeirssonです。
北京で少女時代を過ごしましたが、ちょうど文化大革命に遭遇してしまい両親と離れ離れで暮らすことを強いられました。
Laufeyの母がアイスランドなどを拠点とするようになったのは、子供の頃中国で味わった厳しい体験が原因ではないかと想像しています。
ロンドン留学を経て1988年からアイスランド交響楽団に参加します。
アイスランドの音楽学校Harpa International Music Academyの創始者として、会長を務めています。
父はIMF(国際通貨基金)のJon Sigurgeirsson
Laufeyの父親に関してはほとんどどこにも書かれていません。
父親はアイスランド人のJon Sigurgeirssonです。
アイスランド中央銀行を経て、現在はIMFのアイスランド担当を務めています。
LaufeyとJuniaがお父さんのためにレコーディングした歌がSoundCloudにアップされていました。
お父さんもやはりとても感じが良いです。
この家族に囲まれて育ったからこそLaufeyはあのような優しい音楽を作ることができるのかもしれませんね。
Laufeyのファンは東南アジアに多い?
2023年3月にTwitter上でLaufeyが「アジアでコンサートするとしたらどこがいい?」とツイートしました。
興味深いのはこのツイートのリプライです。
589件のリプライがあり、そのうちの多くがインドネシア、フィリピンなどの東南アジアからのものでした。
日本のファンも結構いるのではないかと想像していたのですが、東南アジアのファンの熱狂と比較すると全く存在していないと言っても過言ではないほどの静かな反響です。
このアンケート結果を踏まえてか、Laufeyの世界ツアーはマニラ→台北→ジャカルタと始まります。
現在のジャカルタはあたかも「1990年代の渋谷」のようにリスナーが盛り上がっているので、Laufeyの音楽がインドネシアで強く求められるのも納得です。
Laufeyのディスコグラフィー
CDなどで購入可能な作品
現在、CDやアナログレコードで購入可能なLaufeyのアルバムは1枚のみです。
配信作品
配信ではいくつかのアルバムやシングルが発表されています。
その他、参加作品
2013年に発表されたオーラヴル・アルナルズのアルバム『For Now I Am Winter』では母Lin Weiと共にストリングスとしてLaufeyがクレジットされています。
Laufeyが14歳の時のレコーディングだと思われます。
他にも様々なアーティストの作品でチェロ奏者としてLaufeyがレコーディングに参加しています。
セカンドアルバム『Bewitched』
2023年9月8日に、待望のセカンドアルバム『Bewitched』がリリースされました。
6月に先行発表されたアルバムタイトルナンバー『Bewitched』
動画のコード表を見るとセブンスやテンション系のコードで演奏されているようですが、むしろトライアド(3和音)で構成されたかのようなシンプルなサウンドに聴こえます。
個人的には少々物足りなく感じました。
しかし、多くのリスナーに届くためにはこのような「民謡的」なほどシンプルなアレンジ・メロディの方が良いのだと思います。
アルバムで最もキャッチーな曲はやはり『From the Start』でしょう。
新たに作られたオフィシャルPVも素敵です。
アルバム『Bewitched』は今までのファンに留まらず多くのリスナーに受け入れられ、ビルボードの総合チャート40位、ジャズチャートで1位という快挙を成し遂げました。
このアルバムによりLaufeyはトップスターへと駆け上がった印象があります。
今後は彼女の名前を目にする機会がますます増えることが予想されます。
まとめ
ここから10年先、30年先「私はデビュー当時からLaufeyに注目していた」と自慢できるのは間違いない、本物の中の本物と言えるアーティストです。
今後、どこまで彼女の音楽が世界をカラフルに塗り替えていくのか、ずっと見続けていきたいです。
彼女が愛する小説を皆で読む「レイヴェイ・ブック・クラブ」についてはこちらからご覧ください。
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